東京スカイツリー(仮作)/rabbitfighter
 

それは奇跡のひとつに数えられるような旅だった
スカイツリー
ただまっすぐに伸びてゆくその木に
僕は仮想の枝を伸ばす
あの街路樹のケヤキのような枝がいい
どこまでも続くフラクタル構造は
鉄骨とボルトのパターンを繰り返す
誰も祈らないから
何も望まないから
スカイツリーは
悲しみを知らないまま育ち、朽ちてゆく
僕たちの新しいランドマーク
仮想の枝に仮想の葉が生い茂り
冬になるとその葉は散って
冷たい風に運ばれていくだろう
駐車場にきちんとランドクルーザーを止めて
同じように奇跡の道のりを旅してきた人たちとともに
まぶしさに目を細めながら仰ぎ見る
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