正月はどこか饂飩に似ている/木屋 亞万
 
年が明けたあさ
目を覚ますと目の前に
水のたっぷり染み込んだぞうきんが
そばの油揚げみたいに旨そうな姿で置いてある

これは床でも拭けということかと
年末の大掃除のようにぞうきんを手にとり
鳥居のしめ繩のようにねじり上げる
濡れているときは餅のように白かったけれど
絞るとすこし布のくたびれがボロボロと手に触れる

体温の低い身体を包み込む
生暖かい布団を天ぷらの海老のように抜け出して
裸足のまま板の廊下を駆けていく
腰が斜め下にぐっと伸びて
冷えたかかとがピンと張る

足の冷えを温めるべく火燵に
下半身をほうり込みぞうきんを仕掛けた主に
ぞうきんを手渡しながら
[次のページ]
戻る   Point(4)