かたられすぎ、とうとつすぎ/Six
、最後に「さよなら」とあった。満月も、一緒に酒を飲みたいのも、「さよなら」も、何もかも唐突だ。安酒の熱燗のにおいが喉の奥にかすかにある。
まいった。糸が切れてばらばらにほどけた詩がゆっくりと落ちていく。空気が重いので、詩はいつまでたっても宙を舞い、底には到達しない。そのうちの幾つかは、わたしのものだ、と思ってしまう。例えば「語られなかった言葉たち」。他に題名を忘れた数篇。詩が空中を落ちていく様子は、それこそ紋白蝶が内緒話をしながら飛んでいるかのように、見えなくもない、のかもしれない。「語られなかった」と、そっとわたしに語りかけた、言葉の息遣いを、わたしは今でも憶えている。
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