飛沫/……とある蛙
先の見えないトンネルを抜けると
そこは渓谷に面した崖で
数十段の階段が川辺まで
雨で光り流れ危険な美しさを見せていた。
階段の先には
溶結凝灰岩(ようけつぎょうかいがんWelded tuff)の
千畳敷と呼ばれる河原が広がり
河原の先すぐに
岩の裂け目に落下し、
九〇〇万年の昔から
白い飛沫を上げる滝が
カーテンのように広がる。
雨降りの中、初老の夫婦は娘と共に
こわごわと滝壺を覗き
その奇観をメモリーに収める。
何万年の時と共に完成されつつあるその風景は
まだ滝を上流に押し上げるという変化を
ほんの僅かづつ繰り返す。
ほんの一瞬の虫のような一生しか持たない
人間の理解を越えて
滝はあざ笑うように好き勝手な飛沫を空に撒き散らす
それを浴びる事自体地球のエネルギーのおすそ分けを受けることなのだ。
謙虚におすそ分けを受けるべきだ。
謙虚に
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