悲しい遺跡/天野茂典
う。廃屋の中の白い肌。かがやく瞳。写真家だけが知っている。そのやわらかなフォルム。濡れた陰毛の湿潤。
灯油に火をかけろ
めらめらと焔を上げながら自己崩壊して行く『天城越え』。石川さゆりの演歌が燃える。
身をすり合わせて、生きてきた、もみじのようなちり際に、炎上する金閣寺の金箔がひらがなのように草書を描く。ここから、あそこへ。いつも願っているように、遠隔操作のモードを選んで、人間滅びてゆく血のありか*出奔するのだ。十三湖。日本海に面して死に絶えたように静まる湖面。湖面をわたる風の冷たさ。燃える手紙よ。油のように走ってゆく便箋のいちまいいちまい。恋しい人に添えなかった恨みの楔。もえながら奔ってゆくのは怨念の風花。しずまるみどりの十三湖。裸になって髪なびかせよ!
もえる廃屋。
十三湖。
宇宙の隕石がふらせる雨に蒼い光がまじるのは
人は滅びを知るからだろう
*泉谷明詩集
2004・10・29
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