冬の日の即興/橘あまね
 
道端に 雪をかぶって
うち捨てられた人形は
さぞや寒かろ さみしかろ


あの日も
おなじくかがやいて 
うなる風に 耳をすませたら
ぼくがぼくであるための
拍動の 確からしさが
ひどくあいまいになったので
にぎり返そうとした掌は
風にはこばれた後だった

あたたかい場所をさがして
歩いていくおさなごの足は
やがて風に乗る
東から西へ
雲の群れとすれちがって
振り払って
明るいとおぼしき方角へ
戻る   Point(15)