引越し/
たもつ
石化する
柔らかな石
心電図の
波形の谷間が
わたしたちの眠るところ
わたしたちの見聞きするところ
わたしたちの対話するところ
/年の瀬も差し迫ったふとしたある日
一組の家族が引越しの準備をしている
出発の直前まで
母親は壁の亀裂を懐かしそうに指でたどっていた
かつて寝室だった部屋の隅には
積み残された子供用の座椅子
一番末の娘が
まだ座っている
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