雪の降る夜/砂木
 
女性である
酔っ払い同士 良いも悪いもないけれど
勝ったぞ とちょっとつぶやく彼女の
遠い故郷が 何をしてくれるわけでもなく

寮の部屋でなんとか布団に寝かせて
北国出身の私なども そばについて
大の男が女の子相手に何やってるのよ
年上の男らしく いっき飲みなんてさせるなよ
と ひとしきり相手の男をこき下ろし

帰りたい帰りたい そんな話しはしなかったが

勝った とつぶやき 翌日も二日酔いで
ろくに口もきけない彼女は
どうみても 後悔していると思うのだけど

あの馬鹿男について 南国をいかに馬鹿にしたか
について話をする時は 歯をくいしばって
湯のみ茶碗を 睨みつけながら両手で握りしめて
帰りたい帰りたい話しはあとまわしにして

でも もうやめてね いっき飲みは という声に
ごめんね と 小さく目を伏せた

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