朝露を踏んで/Giton
 
たそれはガロア群 数学史に類を見ない
美しい環を描いていたのだった
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学士院は二度目の論文も「紛失」した
そのとき少年はようやく気づいたのだった
ぼくは時代より早く生まれてしまったのだと
もしこのさき何十年もの時間をじっと堪えるなら
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いつか誰かが彼の足跡を踏んで壁に攀じ昇る
のを見るかもしれないもし彼がいま弊れれば
激昂した群衆は彼の屍を踏み越えて進むだろう
彼は後の道を選んだ意図して陰謀の犠牲となる道を
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若葉も芳しい5月の朝エヴァリストは徹夜
で起草した予感に満ちた論考を親友に託し
朝露を踏んで決闘の地へと向かった
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それは絶望ではなく人類の希望
への行進これまで誰も決して描くこと
のなかったやさしい幸福の環を描きつつ
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