オリエンタルエクスプレス/kawauso
 
オリエンタルエクスプレスはAM 9:25に出発する
それまで僕らの目の前には現れない
がらんとしたホームに青白い木枯らし

先発のサンダーバードがピルルとやってくる
大荷物を持った人々が列をなしている
列車とホームの隙間にお気をつけ下さい

サンダーバードがプルルといってしまうと
後には何も残らない
そこには僕と、英字新聞を握る杖つき老人

老人は自分の乗り場を探しているようだった
案内の地図でも見るかのように英字新聞に目を落とす
顔を上げた老人はまた僕の前を通りすぎていく

あと五分で僕の列車がやってくる
時計の針は縄文式土偶のワルツよりもゆっくりだ
地面においていた荷物を持ち上げる

オリエンタルエクスプレスがやってきた
線路は響き、雪が舞い始める
入り口が開くと懐かしいかおり

深緑のイスに沈んだ僕は、窓の外の老人を見つける
老人の前に列車は現れない
駅員が甲高く笛を吹くと
入り口という入り口がすべてしまり、列車は深いため息をつく

車内販売の焼肉弁当のシワに
老人の悲しみを垣間見る

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