動物園/salco
 
またぎ出来る低いコンクリートの仕切りの中で
象の知性は確かに、制限された自由というものの面積を認識しているのだ
日中をこうして騒がしい見物人達に嘲弄されるのを無視し続けてさえいれば
大好きなりんごやかぼちゃの混ざった食餌をもらえ
夜は四角い清潔な寝床へ入れ、一応は水浴びも泥浴びも
強要された不如意の面積さえ気にしなければ随意であり
たまさかの休園日には担当の飼育員が園内を散歩させてくれるのを

無礼な、しかし境界線で隔てられている、
五月蝿い小動物を黙殺する事に生活上の妥協点を見出して
本能を鼻の中に眠らせている
永劫の不自由と退屈
幽閉を拷問と解釈しない事で受容している、
この巨大な陸棲動物の知性は不思議と、人類と最も近似している

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