未来への処方箋/石川敬大
 



 SF作家や
 だれかによって手渡された
 未来のそばで
 ぼくらは生きている

 どこかがイビツでなにかが不適切なこの
 だれかの未来は
 あるいは
 使用方法をあやまった
 処方箋だったかもしれない

 エッジと死角がやけに多いガラス張りの
 街の真ん中がポカンと空洞で
 野良犬
 カラス
 復讐する自然たちが
 子どもたちの遊び場を奪っている

     *

 マンガ家とSF作家の脳内にありつづける未来は
 蜃気楼かもしれないと思う
 安住できない書き割りかもしれないと
 未来って
 はかない希望の代名詞だ

 だれかによって手渡された
 未来のそばにいる
 ぼくらは
 まもなく生まれる子どもの
 生まれる前の記憶のなかで生きている

     *

 すでに
 映像のなかの少年が記憶する
 未来への処方箋は
 すきとおったタネのなかに書き込まれている





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