幾千のノイズをくぐり抜けて/塔野夏子
 
君と会ったら
君と交わす言葉で
森を作ろう
いろんな樹がざわめいて
ざわめきの中から 光がこぼれてくる森を

君も(そう 君でさえも)
僕を救うことはきっとできない
けれどそれでも君が存在しているそのことで
どんなに僕が守られているか
知っているかな

君のはばたきが時に危なげにかしいでも
僕も手を差しのべはしない
けれど君の秘密を花束のように
ずっと抱きつづけているよ

冬だね
寒がりな君も
あのよく似合う帽子とコートで
白い息吐きながら街角を歩いているんだろう
淡い虹がかかったら
夢見る瞳で見あげて

君と会ったら
君の水平線と僕の水平線を
やわらかく重ね合わせよう
そしてその向こうから
はじめての星がのぼるのを二人して眺めよう




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