涙イコールせっくす/アラガイs
涙は何れ枯れるって
あれはうそです
歳をとればとるほど些細な事柄が胸に凍みてきて
それには
深い傷痕の縫い目を自分に重ね合わせたり
生きものの
生きものたちの還る姿が地を張る根のように
小さく健気に伸びてゆく
地脈は大地と空が鏡に溶けあい
そして
水たまりを飛びこえる
ほんの少しひらいたあんぶれら
静脈の渇きは潤い
自ら雨と化すのです。
失うとは
帰結する帰納でもあり
老いにせっくすも枯れるなんて
あれは うそです
地の底をながれる養水は枝葉にひろがり
小鳥たちは赤い木の実が落ちるまでじっと我慢する
それは
熟実が滴る甘い果汁
汲み取るちいさな虫たちからいのちは宿り
色づく蝶の羽根
幾度も幾度も声を震わせながら
破れてもなお
触れる
触れては感じる葉脈に、あつい血の気は通いあい
そして
永遠に繰り返される自然のなかで朽ちた木は結ばれる
それが気持ちよいもの
それが
気持ちよいもの 。
戻る 編 削 Point(10)