貯金/yumekyo
 
 栄光のしるし
一緒に与えた 笑顔の細波
私にとっては存在したかどうかもおぼつかない
故に預金通帳には まだ端金しか刻み込まれていない
しかし着実に 数字は大きくなっている
痛みにのた打ち回った日々が悲哀と共に蘇り
壁となって節々に立ちはだかったとしても
涙をぬぐい また駆け出す
一度 列車に乗れなかったものは
死ぬまで 駆けるほかはない

ひとが言葉の羅列を素直に飲み込めないのは
「幸福」は感じるしかないものだから
もっともっと 直截的に
ひとは温もりを肌身に受けたくて
そしてともに行く相手を探し出す
駆け続ける者にとってのエネルギー源は
駆けるたびに預金通帳の数字が少しずつ増えていって
いつかは ともに駆ける相手を抱き寄せるのに必要な数字に達するという
形のない期待感
それは 荒れた野に朝日が昇り
鈍色のレールを淡く照らすときの
美しさを持っているはず
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