「視線」/ベンジャミン
 
子猫を抱き上げるような眼差しで
この街を歩く人は少ない

真剣に生きようとする人の眼光は鋭く
何かを諦めたような人の眼は暗い

そんな視線が複雑に交差しているのを
私の視線は知らずに追いかけている


    ※


そういったいろいろの視線に出会うたび
私の心は間単に貫かれて
私はその一瞬のうちに死んでしまう

視線が何かを語るよりも先に
私を容易に殺してしまうのだ

けれどそれはあまりに一瞬のことなので
私は肉体として死ぬのではなく
まるで水槽の中の魚のように
水と空気の隔たりをつくるガラスのような
そんな透明にいつも守られてしまう

ただ強
[次のページ]
戻る   Point(4)