ゴッホの空咳/salco
夢に根ざした情熱は
けれどガラスのように脆い炎だ
その熱情は外に向かって放たれ
壁の前に砕け散る
それでも消えずに突進し続ける
ドン・キホーテの姿は哀しい
ゴッホの空咳 コッホ、パスツール
幼児より尚傷つき易いエゴイストは
傍迷惑な理想の押し売りを決して自分の鏡に見ない、
涙をためた盲の目をしている
彼ほど人を愛する者はなく
彼ほど愛されぬ者もない
独り善がりでしかない激しい愛他精神を抱えて出て行き
あちこち街を彷徨い歩き
失望を曳きずり夜道を帰る
糞の役にも立たない熱情の火力が人の顔をしかめさせる
太陽を直視するようには
人間の目は出来ていない事に独り気づかない
その渇望はうるさく纏わりつく乞食の哀願のように
人を辟易させるという事も
彼は拒絶だけを解答に見、
結論を導き出す数式の方には目もくれない
サディストでないエゴイストは結局自分ばかり傷んで
その理由も解らないので
耳を切り落としたりするわけだ
芥川龍之介の言う
「超阿呆」とはこんな人を指すのだろう
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