居場所/385
 
小さいとき、れんげで遊んだ田んぼにマンションが建つ
夏休みに、魚をつかんだ川の土手が整備される
小学校の通学路から、交通安全の旗持つおばちゃんが消える
いつも朝、すれ違う中学校の先生に会わなくなる

早朝バイト先だった、町で最初のコンビニが突如姿を消し
幼なじみが結婚して、新しい生活をはじめる
いつもの時間、いつもの場所に出かけることに倦みながら
一方で愛おしくも感じる、ことが苛立たしい

15年住んだ家の壁が剥がれて、塗り直される
建てつけがわるくて抜けた床が、張り直される
あの日から剥がれたままの風呂のタイルも、敷き変えられる

そうやって、眼の前から親しい場所はなくなり
もうすぐ私も、この町の住人ではなくなる
目の前の空き缶、蹴っ飛ばして空振って、バカバカしくてクス笑い

(02.05.14)
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