暁闇/
楽恵
黙っている
告げるべき鳥がすべて死に絶え
鳴かない世界は明けることがない
島は二百年前、大津波に襲われた
(明和八年三月十日)
津波は島を横断しいくつも村を飲み込んだ
打ち上げられた海底の巨石に風があたって
揺れる葉がこすれる音がし続けている
なぎ倒された植物の匂いがしてくる
起きだして窓の外を眺めれば
真暗闇に消えていく男のうしろ姿を見つけることができる
白く下る道を去りゆく
透けた背中を見送る
夜が明けないうちに
海岸まで歩いていくつもりなのだ
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