繰り澄ます/木屋 亞万
い雲では隠せないほどに
月が黄色く輝いていた夜が
瞬く間に明けていく朝
お茶目な乳歯のように月が空に残っている
コップの底の溶けかけの氷を愛でるように
なるべく空を見上げて歩く
散歩をするときはなるべく満遍なく
足を散らすようにしなければ
最近は南の方に足を伸ばしていないので
今日は南方へと舞い散っていく
さようならに余計なことはしないように
宇宙の成り行きに任せていたなら
来年辺りにまた逢えるかもしれない
南極は聞こえないはずの北極の歌に
ずっと耳を澄ましている
その凍った背中は嫌いではない
北の端も南の端も寒いので
世界は繰り返し澄み渡っていく
戻る 編 削 Point(2)