繰り澄ます/木屋 亞万
北風が吹き込んで
天空の冷たさで街が満たされたら
山の端が私を呼んでいるような気がする
雲が驚くほど早く流れているのは
いまが師走だからなのだ
北極の揺れている音がする
歌っているか、踊っているか
オーロラは夜空のカーテンではなく
北極が纏うスカートの裾
誰の手にも収まることのない天の羽衣
あなたの黒髪が夜の闇に紛れてしまったことも
遠い過去に思えるほどの寒さ
もうその陰を探すことすらやめてしまった
けれど夜道を歩いていると
偶然に君の香を嗅ぐことがある
ふと
感謝の念で体内が満ちていくのがわかる
それはいつも干からびた寒天みたいに悲しい
薄い雲
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