死者と私の為の夜/salco
 
 手を取り合って寄り添い、二人は再び歩き出す

若い女の声
 ほら、あの人が駆けて行く 何と若く美しいのだろう
 ほら、手を振った 
 あの人は何処へも行きはしないのよ 
 何故ならとうに行ってしまったから

老婆の声
 ずいぶん待たされました
 やっと、私もじき、あの人と本当に手をつなぐだろう
 此処がその約束の場所
 私が永の眠りに目を閉じて、あの人と待ち合わせる所

若い男の声
 どうしたの、君はいつも遅刻だね!

若い女の声
 この老い衰えた殻を脱ぎ捨てて、あなたの待つあの丘を駆け上り
 抱き合って、二度と離れない
 何処までも、いつまでも私達は一緒に行くだろう 
 この大きな涙の溜りを後にして

若い男の声
 その時、僕らは初めて時を超越する 
 その時、例えば時は
 掌に載せた水晶玉の中の、小さな小さなパノラマでしかない
 さあ、行こう

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