本物の雪/藤鈴呼
粉雪や 桜に 見立てるならば
小さな 正方形が 良いらしい
長い時間 空中を 浮遊させるならば
長方形が 有効らしい
キラキラの 金や 銀の 紙吹雪を
まるで 本物の 雪であるかのように
笑顔で歓迎する 観客達
場内のヴォルテージは 最高潮
唸るように 響く 重低音
ハウル程に シャウトする ヴォイス
壁のデジタル時計ダケが
冷めた音で 日付変更線を 告げる瞬間
目覚めた
ブルッと頭を左右に振れば
呼応するかのように 犬が啼く
お前も 怖い夢でも 見たのか?と
寝ぼけ眼で 話しかければ
擦り寄る身体が やたら 熱い
デジタル時計の代わりに
ここに 体温計が 有ったならば
余計な覚醒も 起こさずに
お前の 役にも 立てただろうに
古ぼけた 冷蔵庫の端っこに
油まみれのマグネットと一緒に
ぶら下がっているのは
デジタル温度計だったから
とりあえず 室温を 測る
その ついでに
上機嫌までの 角度を 計ろうか
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