どこの虎の骨  −ハコモノの内容物に捧げる哀歌/相差 遠波
 
その遺伝子は思い出しはしなかったのかな

とうとう湿った腐葉土を踏むことなく
この子は骨になって博物館に立つ
このまま砕けてゴミになるまで
長い踵の骨は大地に触れることはない

まだ 漢方薬になった方がマシだ

獰猛な牙
私の腰まである肩骨
力強く張った後ろ足
しなやかで長い背骨 尻尾の先まで
虎の骨

その野生で生きるために構築された形状を
      無駄になった機能美を
私は黙ったまま哀れんだ

戻る   Point(6)