どこの虎の骨 −ハコモノの内容物に捧げる哀歌/
相差 遠波
その遺伝子は思い出しはしなかったのかな
とうとう湿った腐葉土を踏むことなく
この子は骨になって博物館に立つ
このまま砕けてゴミになるまで
長い踵の骨は大地に触れることはない
まだ 漢方薬になった方がマシだ
獰猛な牙
私の腰まである肩骨
力強く張った後ろ足
しなやかで長い背骨 尻尾の先まで
虎の骨
その野生で生きるために構築された形状を
無駄になった機能美を
私は黙ったまま哀れんだ
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