ABOTT/竜門勇気
酒場に入るとすぐに
乾いた拳が目に入った
次に見たのは閑散としたカウンターに座る男で
話しかけても何も得ることはなさそうだった
マディって女をしってるかい「「「「
女らしくはない名前だね
マディってのは俺がつけた名さ「「「「
くちづけの一つで泥濘むような、そんな女だ「「「「
机の上に腐ったマティーニが転がっていた
男は腐った全ての酒すら愛せそうな男だった
テラスには太陽が溢れている
忘れそうになりそうな過去が
蘇る寸前の天気だ
そんなことを思っていると
再び乾いた拳が眼前にあらわれ
もう一度気を失った
泥がまぶたに張り付き
眼球を奥へ奥へと押しやっていく
冷たい開放が脳の奥から
泥とせめぎ合い
勝者のない戦闘が落ちた幕の裏で閃く
マディの泥濘を何度か楽しんだだろう「「「「
冷たいオーロラについて
一言進言出来るような夢を見ていた
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