コロッケ/鵜飼千代子
 

神楽坂を下る

「いっしょに帰ってもいいですか?」
「あぁ」

宴席でのお酌も拒むあなたと
いっしょに帰る

ーー 合評会の後だから?
ーー 「ゆきうさぎ」が好きなのかな?

「ちょっと待ってて」

と、
肉屋の前で立ち止まる。
奥さんのお使いの「コロッケ」を買わなければいけない
のだという

「美味しいんだよ」

と、目を泳がせながらコロッケを抱えているあなたに
なんだか和んで微笑む
少し、日常に入れてもらえた

神楽坂を下る

ふたりとも話題を作るタイプではないから
わたしは少し遅れて 同じ距離感で
黙々と 
神楽坂を下る


[次のページ]
戻る   Point(17)