コロッケ/鵜飼千代子
神楽坂を下る
「いっしょに帰ってもいいですか?」
「あぁ」
宴席でのお酌も拒むあなたと
いっしょに帰る
ーー 合評会の後だから?
ーー 「ゆきうさぎ」が好きなのかな?
「ちょっと待ってて」
と、
肉屋の前で立ち止まる。
奥さんのお使いの「コロッケ」を買わなければいけない
のだという
「美味しいんだよ」
と、目を泳がせながらコロッケを抱えているあなたに
なんだか和んで微笑む
少し、日常に入れてもらえた
神楽坂を下る
ふたりとも話題を作るタイプではないから
わたしは少し遅れて 同じ距離感で
黙々と
神楽坂を下る
飯
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