居場所/一 二
 
何故かいきなり
また夏が始まる
角を曲がって坂を見上げると
食パンを咥えた妹が駆け下りて来た

真夏日に有りがちな夕立
には似合わない土砂降りの雨の中
妹は傘もささずに軽快に雨を避けて
俺に近付いて来て
こう言った
「理想と現実
どちらを引き換えに夢を買う?」
そこでブツリといきなり感覚が途絶えた

「夢だったのか?」
目覚めると俺は
得体のしれない何かを感じていた
いくら二次元とはいえ
日常生活では
宝くじに当選する
かのような確率でしか
経験できないことを
さも、時計でも見るかのように
眺めているからか…
それが、この異常事態に
巻き込まれてし
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