老人と犬/……とある蛙
冬の寒さに身を委ね
凍れる唇に物を言わせようと
北風の中歩き疲れて
坂道の途中
針の枝振りの銀杏並木を
ゆっくり北風に煽られながら
今年の冬も歩きづらく
また疲れて坂の途中
歩き続ける坂道の途中
突然横切る犬と老人
妙に快活な老人としょぼくれた白い犬
何が悲しくて散歩するのか
ゆっくり歩む犬は
ランニング命の老人に引き摺られ
恨めしそうに上目遣いで老人を見る
老人は意に介さず引き摺ろうとする
ズルズルの歩みと
ズルズルの強制
犬も老人も同じ道を歩いている
老人の信念と犬の倦怠
いつか逃げ出してたる
経済力が付いたら
と 犬の独白
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