ひとつ 伽藍/木立 悟
の魔が居るかぎり
あなたは魔だが魔ではない
月を二つに割るまぶた
耳も血も街に降りそそぐ
うたは色を持たず
ただ水をゆく
場所を持たず
右肩を抱かれる
望むかぎり望みは無く
極地の陽を見つめる
光は
棘のように消える
あきらめの足りなさ
空の両端
透明を
透明に通る
何も聞こえない冬の日
闇に闇を彫り
雨をそそぐ
音しかない
音しかないのに
見えはじめる金
ふるえとふるえのさかいめをゆく
抱く抱かれるには触れもせず
在ると無しとのはざまにしたたる
わずかな糸を歩みつづける
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