ひとつ 伽藍/木立 悟
 




夕暮れを映す目に耳を寄せ
水の音を聴いている
水の音しか聴こえない
水の音を聴いている


火がこぼれ
また
火がこぼれた
到かないもののようだった


街より高い樹
無い街の地図
聴こえ来るうた
ひとり原めくる
ねむる息
ねむる息


ところどころ透明は白く
嘘に重ねた嘘を押しやる
先へ先へ
見えずに在るもの
わからないまま
何かに似るもの


群れる手のなか
ひとつの火
ただ一色の
虹のはじまり


建物から建物へ
髪は髪に燃え
影はかたちのかたちにたなびき
夜から夜へ依代を廻す


あなた以上の魔
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