ひとつ 伽藍/木立 悟
夕暮れを映す目に耳を寄せ
水の音を聴いている
水の音しか聴こえない
水の音を聴いている
火がこぼれ
また
火がこぼれた
到かないもののようだった
街より高い樹
無い街の地図
聴こえ来るうた
ひとり原めくる
ねむる息
ねむる息
ところどころ透明は白く
嘘に重ねた嘘を押しやる
先へ先へ
見えずに在るもの
わからないまま
何かに似るもの
群れる手のなか
ひとつの火
ただ一色の
虹のはじまり
建物から建物へ
髪は髪に燃え
影はかたちのかたちにたなびき
夜から夜へ依代を廻す
あなた以上の魔
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)