快音/天野茂典
 
、蓑虫がぶらさがっている古木
   を裂いて匂いだす生木の滴り
   分からなくても美しい、現代詩のようにと
   かつて宇宙飛行士は語った ディスコミュニケーション
   拒絶するのだ読解不能のイマジネーション
   藁のことばで夜行列車を走らせるのだ
   詩は意味で書くのではない
   ニュー・インスピレーション*で書くのだ
   ニューヨークを書いてもマント狒々を書いても
   そのことに変わりはない
   詩は発色の現像行為なのだ 錬金術師だ


   詩が野菜のように新鮮なうちはぼくらの健康はたもたれるだろう
   あたらしい詩にふれることは遊園地に行ったように楽しいことなのだ



   海埜今日子『李碑』(思潮社)がいまのぼくの宝石なのだ



                   *野村喜和夫
         2004・10・28

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