おもてなし/たもつ
 
はないものは、お茶とコーヒーの飲み物だったけれど
何か変な味がした
もしかして、この人は友だちではないのではないか
家を間違えてしまったのではないか
かつて苛めたことがあって、その仕返しをしているのではないか
いろいろな思いが頭を巡り、顔をまじまじと見ても
友だちは友だちのように、不安になるくらいの満面の笑顔で
何より思い出話はすべて通じたし
昔どこかで会った気もする
ご飯よ、と女の人の声がすると
友だちは人形の私を放り出して
部屋を出て行ってしまった
食べ物はすべて粘土で、液体は絵の具を溶かした水だった
口の中にべたべたとした粘土と絵の具の味だけが残った
もちろん、本物のお大福もスパゲッティやらも食べたことがないので
それらの味を知らないし
好きなものも嫌いなものもあるわけがなかった
おままごとをしている時だけ
私は私の人格を与えられるのだった
今度で何度目の私だったのだろう
意識が薄れていく
これからすべてを忘れる
またおままごとの機会があれば
新しい別の私が与えられるのだ
 
 
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