根雪に眠る町/within
 
粟立つ気泡に抱かれて
私は目覚める
真冬の夜に
梟とともに体を震わせ
パチン、と
弾ける

それはきっと終わるということ
ひとつの形の終わり
涙を流すのは
私だけじゃなく
時間を共にした友も
家も道も森も海も丘も電線も
泣いている

氷点下の住人たちは
火を絶やすことなく
油をを求めるために
馬車を引く
ドラム缶に詰まった油に
乱れた私の火花が
散れば、
そこには炎の花が咲く

子供だからって
侮ってはいけない
幼き皇帝は
命を数珠繋ぎにして
リセットボタンを押してしまう
無邪気さではなく
生まれながらの残酷さで
私たちを終わらせてゆく

お気に入りだった小鳥が
籠の中に戻るまで
飽くことなく泡を弾いては
うつろな午後に
欠伸をするだろう

みずうみの底で産まれた泡は
まるまるちちぢぢと散ってゆく
眠る少女を
けっして死なせることのないように
守り続けている

戻る   Point(5)