戦場の外れにあるコーヒーショップで/石川敬大
 



 いくつもの
 ヒルとヨルとを重ねあわせた
 一枚の都市の風景画と
 そこのみで生きる人物が描かれているとして
 かれは
 どこのマチカドを
 いくど
 折れまがり
 バスにのり、電車にのって
 だれと
 おちあい
 いくたび川との別れを
 指折りかぞえてきたことだろう

 得たものと捨てたものとがひとしく
 釣りあうイマ
 という、都市の危うい
 針のサキに立つ居心地の悪さに
 身もだえ竦み
 かれは
 ぼくやぼくらである
 きみは
 うまれおちていく日も
 生きることなく逝ってしまった
 アニだったりする

 ひらかれることのなかった
 アニの眼に
 かれは
 ぼくやぼくらである
 きみは
 砲音の雨のざわめきのしたで
 どれほど疲れはてた泥濘にみえるのだろう
  ―― たとえ
 あかるいサイマツの
 コーヒーショップの隅っこ
 の、椅子に
 ふかぶかと座っているときにでも





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