K/salco
越して行く雲
地平を焔の異国に化身さす夕陽
―― 掻き消えた笑い声にふさわしいのは
君の思い出にふさわしい情景は、墓石に降りつのる雪でも
星の瞬きでもなく
すだく虫の声でも、枝に残った紅葉でもなく
砂に消え残った足跡でもない
帰り来ぬまばゆい若さに我々が眉根を寄せる時……
K
死は「おやすみ」でも「さようなら」でもないのだと最近わかった
影を引きずり順番を待つ私達の生に、論拠に足る意味などありはしない
例えばこの死者の静謐に勝る言辞すら私達は表明し得ないのだ
ただ今日を長らえる為に慣性の糧を製造し、無意味に老い行くだけ
飛び去った者の陽炎に呆けた目をしばたかせて虚を仰ぐ時
固い地面に暫時残された敗者の如き我々の掌に握りしめた宝財は
ただ存在する自己への執着と、喪失への恐怖しかありはしない
のたくる虫けらどもの催す法事だよ
K
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