帰宅するとき/
たもつ
隙間から押し寄せる波が
文庫本の栞を
何に使うのだろう
一枚さらって
もとの海に戻っていく
生き物の柔らかな陰影
そのようなものがあると
いつまでも
触れていたくなる
がらんどうの口は安らかに崩れ
声のない言葉が
窓の向こう側へと沈む
ただいま
おかえり
それだけで
済むはずだったのに
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