華と蜜/相馬四弦
白いツツジが咲いていたのです
心が浮くような甘い花です
ゆたりと喉を伝う蜜の香り
小さな手をべたべたにして
そのままスカートにしがみつこうとするから
よく貴女を困らせました
カーテンの隙間から透明な陽の射しこむ
その交差がほつれてゆく
壁掛け時計の秒針 ひとつ刻むたびに
箪笥の上から私たちを見下している人形の瞳が
ずれる
─どこに咲いているというの、この部屋のどこに─
床擦れしないように身体を抱いて
寝返りをうたせてあげると
貴女はそう呟いて
枯れ枝のような腕を四畳半に踊らせる
缶詰の白桃を
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