遠雷/天野茂典
、か
つて吹雪の中に閉じ込められたぼくの、傷心。新津。『北越雪譜』(鈴木牧之
著)には、燃える水の話がでてくる。
したたる。鱗粉。
燃える水。花火。
実は石油のことのだ。新潟には天保の頃から石油の在所が確かめられていたの
だった。蝶の死骸も腐乱して降り積もれば、やがて堆積層となり、遂には油と
なる。油に火がつけば災害は決定的なものに鳴るだろう。震源の深さ約20k
m。堆積層のの地盤が下敷のように潜り込んで、充分にエナジーを溜め他のプ
レートを撥ね退けて、地表を激しく揺らしたのだ。
空白の地帯。
空白の地溝帯。
予測されていた危険地帯。地震国家、日本。地下の地盤が胎動している。活断
層。蝶は死んだ。ぼくの指は鱗粉塗れだ。まるでラメ入りの吹雪きのように、
悲歌が立って合唱している。花火のように打ち上げられながら・・・・。
したたる。鱗粉。
燃える水。
花火だ。
2004・10・27
戻る 編 削 Point(1)