グレープフルーツ/橘祐介
 
る友はいないのか

飾りの付いたナイフもあるのに

一人荒野に出ろというのか

引き止める君はもうここにいない

砂の道に今日、今から出かける

今度帰ってくる時は、

いったい何を持って帰れるだろうか

何も分からない

屍となり帰る我が身の哀れさか

分かっていることは一つ
ここにいては駄目になる

極彩色の毛布も
ご馳走の大皿も

何もなくなる砂の道

ああ、でもそこに行かなければ
生きている意味などない

苦きグレープフルーツ右手に持って

星のあかりをたよりに

砂の道を歩きはじめる



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