一番星/アズアミ
薬局のカエルは
店先に置かれたその日から
休むことなく
この街を見守ってきた
少女が殺されたよるも
カエルはその目に
犯人の顔を焼き付けていた
なのにカエルは
警察にも、
遺族にも、
道ゆく人にも、
それを伝える術を知らなかった
カエルは考えた
雨でしわをつくり
雪で肌を白く染め
日差しで頬を赤らめ
ながい、ながい時間をかけて
カエルは自分の顔を
犯人のものに変えていった
ようやく輪郭がととのったころ
事件はもう
すっかり忘れ去られていた
人の顔みたい、と噂され
つぎのあさには
カエルの処分が決まった
カエルに後悔はなかった
おれは正義を貫いた、と
胸を張ってすてられた
山奥の廃棄場
たくさんのゴミのうえで
カエルは永い眠りについた
一番星になって
この街をてらす夢を見ていた
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