春のような夜/マナ
あおいで薄紅をたおれこんだあなたの
その首筋の白いことよ
はらり落ちる桜がまたあの日のようにつめたければいいのに
ほおにうでにゆびさきにべっとりとついた雨をあらい流して
春の香がよんでいるから
つらぬいた暁光であってもとどかなければと、もう一度
天つ風にいのる
うなだれる黒髪が
春霞といっしょに夜になだれこむ
しずかにねむる浅葱があなたの赤い瞳にうつりこめばどんなにうれしいことであろうか
みえますか と流れだした露のしたたりがあたたかさにふれたならば
いっそ夢でなければよいとさえおもう
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