眼福/相差 遠波
眼福眼福
駆け行く灰の雲のあとに青い空
濡れ葉に水滴
さえずる群雀のふくよかさ
眼福眼福
丘の上に立つ古い山桜
枯れ枝に積もる雪
佇む烏のただ黒き姿
眼福眼福
薄墨色の稜線より射す朝日
河原に溜まる朝霧
ご来光に合掌する婆の手の優しい皺
眼福眼福
夏に近い初夏の緑にふくらむ山
散り残りたる藤一房
茶の野うさぎの跳ねて逃げ行く様
眼福眼福
よきものを見せていただきました
もしこの目が見なくなろうとも
ここまで蓄えができましたなら
見えてるも同然
むしろ無くしてからこそが
この福禄のありがたさ
眼福眼福
それまでは
もっと漁りにまいりましょうか
眼福眼福
椀に盛られた貝の模様の細やかなること・・・
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