グッナイデイ/船田 仰
誘惑に負けた方、を演じるために
とかく手順が多いことに辟易するぼくは
足下のアスファルトに夜空を見る
髪が踊って唇とつながる
一足ごとにずぶりと舐めるように、明日とやら
抱きしめなくていいからあいしてみろよ、
削り取った世界をかえして、と、
こごえる指先がテーブルの上でひとつになり
それからもう分かれてくれなくなった
二杯目のハーブティーから
漂う躊躇
もしくは蹂躙
足であることに変わりなし
かなしみが背骨を伝ってかかとを殺さないように
海底をあるいているのだ
そのたび夜空がこぼれかかってきて
街灯を抱きしめようとしては
散ってのっぺりとアスファルトの中へと
きらめく泥の中へと
染み付いた
小さく指をならしながら歩く
なにもかもが背骨を伝い太ももの内側あたりでまどろむ
世界の首もとに枕を差し入れる
あんたのことばは分からなくなったけど
眠らせてあげることはできる
削り取った宛先は
ぼくの喉の奥の奥
ぐずっている世界
眠らせては起こすのはきっと
染み付いた
おまじないに似たなにか
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