毒虫/ホロウ・シカエルボク
 
強い日差しの中で私は夜を待っていた、冬の日差しは針が降るみたいに痛い、街道の終わりのバス停のベンチに腰をおろして夜を待っていた、成長期を逃した年頃の娘のような顔をして―それは実際にそうだったのだけれど―水晶体の表面を泳ぐ細かい塵のひとつが過剰に自己主張をして私の視界におかしな線を躍らせる、なにも見たくないと思っている時ほどそういうものは見えてしまうものだ、私には分かっている、分かっているから虫に刺されたくらいのいらだちくらいでいつもおさまってしまう、ものわかりがいいという特技は、往々にして自分を厄介な状況に追い込んでいくものだ…ここ数日まったく雨が降らなかったので、路面はこれ以上ないほどに渇いてい
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