カナリアは/アズアミ
 
カナリアは憧れていた
眠りにつく前には決まって
とりかごを定規に
空を測っていた

カナリアはフルートに嫉妬した
自分よりきれいに泣く
フルートに嫉妬した
しかしそれこそが
自分が愛玩である証なのだと
陽気に笑ってみせた

カナリアは小説から
ひとつだけ文字をついばんだ
それをひらがなにひらくと
巣に持ちかえり
ここちよい耳鳴りの中で
あたらしい音を手に入れた

カナリアは満員電車から
秘密をぬすんだ
それをオブラートに包むと
15センチ先の風にのせて
そっと詠ってみせた
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