絶え間なく流れ続ける音楽のこと/及川三貴
 
窓という窓から一斉に解き放たれた歌声は高く細く僅かな演奏もなく途切れを知らず続く
町並みがあってそこに海が確かに在る水の苦しいまでの堆積 遠く目を細める先に錆色をした潮流 空が低い
音楽でない全て言葉の中に無機質で甘美な罪のようなものがあることを知った空中に浮いた三階
栄華を誇った古代の空中庭園が砂の中に消えたことを知ったのは随分と時間が経ってからだった
午後の日差し 顔をゆがめて泣く彼女 すこし離れた距離で わたしはかなしいことがかなしいということがわかった
この大気を震わせる音楽や声はあらゆる広さに沁み通り充満している それは単純な熱の法則に支配されていている 力の総量は変化しない
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