よく泣いていた/吉岡ペペロ
よく泣いていた
眠るまえ泣き
屁理屈に抱かれて眠った
それを繰り返していた
そうしているうちに
かなしみと添い寝できるようになっていた
泣こうとしたらいくらでも泣けた
かなしみに対処するからだじゃまだなくて
そこにうすい蓋をするようにして泣いていた
預かってくれたひとは
いつもおなじことばでぼくを慰めた
にんげんから出てくるもんは全部きたないもんばかりやけど、鼻水、よだれ、おしっこ、うんこ、おなら、・・・・・・
ひとしきりきたないことばをならべ終わると
なみだだけはきれいなんよ、なんぼ泣いてもええんやで、大丈夫や、
その屁理屈に抱かれてぼくは眠った
眠った
眠るまえ泣き
屁理屈に抱かれて眠った
それを繰り返していた
そうしているうちに
かなしみと添い寝できるようになっていた
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