よく泣いていた/吉岡ペペロ
 
よく泣いていた

眠るまえ泣き

屁理屈に抱かれて眠った

それを繰り返していた

そうしているうちに

かなしみと添い寝できるようになっていた


泣こうとしたらいくらでも泣けた

かなしみに対処するからだじゃまだなくて

そこにうすい蓋をするようにして泣いていた

預かってくれたひとは

いつもおなじことばでぼくを慰めた

にんげんから出てくるもんは全部きたないもんばかりやけど、鼻水、よだれ、おしっこ、うんこ、おなら、・・・・・・

ひとしきりきたないことばをならべ終わると

なみだだけはきれいなんよ、なんぼ泣いてもええんやで、大丈夫や、

その屁理屈に抱かれてぼくは眠った


眠った

眠るまえ泣き

屁理屈に抱かれて眠った

それを繰り返していた

そうしているうちに

かなしみと添い寝できるようになっていた





戻る   Point(8)