帰郷/いねむり猫
 
で暮らしていたかのように
静かに寝床の支度を始める

 ここが旅の終わり なのか

小さな町は 男を恐れ 敬い 
日常の営みの背後に男を隠し 忘れる

 何もない部屋のうつろが
 心地よい
 小さな窓から見える 家々の明かりが
 男の修羅と関わりなく
 太く続いていたものを教えている

だれも尋ねてくるもののいない小さな庭に 
毎夜 焚き火をしながら
強い酒をなめる

満天の星を仰ぎながら 
かつての巨大な企てに 
無防備に駆り立てられた恥を なめる

 あやつられていたこと
 嬉々として争いの中へ飛び込んだ無知

 この平和の中に 決して
 禁断の音楽を 再び持ち込んではならない

それでもなお
男の荒れ果てた血管の中に
まだ血は踊っているのか

 倦怠が満ちている この故郷に
 争いの跡を残してはならない

日常が 男を包み 
小さな町は 男を背後に隠す


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