赤土の唄/佐々宝砂
 
私は素手で土を掘った
逆さ剥けから血がにじんだ
さらに掘り進むと爪が剥がれた
赤土は血を吸いながら悦んで湯気をあげた

肥ってはいるけれどゆがんだ芋虫が
私の掘った穴から這い出してきて
あのひとはそれを見て悲鳴をあげて
私を口汚く罵った

あのひとが掘れと命じた
金の鉱脈がそこになかったとしても
それは誰のせいでもない

私は芋虫をだきあげて子守唄をうたう
私は孤独ではない孤独ではないとおもう
赤土は今日も豊かに湯気をあげる

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