冬に芽吹いた新世界へ/within
冬にひとりだけ生き残った蚊のように
殺がれていった私の身体に
悲鳴は一瞬で消えてしまい
なだらかな夕日が
両の眼で揺れる
ヒステリックに哀しみをぶちまけ
涙を流さず嗚咽だけを漏らし
笑顔で待ち人を迎える
行方知れずの人を忘れようと
走る、さ迷う、歌う
忘れられないから動き続ける
なだらかな波と
粒子と粒子のぶつかり合いが
無限小の海で続き
私は放流された稚魚の群れに混ざり
一緒に泳いでいた
水底に辿り着くまでに
偏光を繰り返し
精錬された鋼のような光は
柔らかい毛布の向こうで
眠っている私を
貫き
血まみれにし
深い眠りの底で
少年が
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